2月の旅で長年探していた作家さんとようやく出会うことができました。
5年ほど前にチェンマイのイベントで見て、その宇宙みたいな刺繍に惚れ、
すごくすごく欲しかったけれど高すぎて手が出ず、
次こそは絶対買おうと探したけれどその日から一度も見かけることはなかった。
その数年後にタイから日本に遊びに来た友人が彼女のカバンを持っていて
(私が泣く泣く買うのを諦めたそのイベントで、頼みに頼み込んで安くしてもらったのだとか。)、
改めてじっくりと見たその作品の美しさに圧倒され(今でのその時撮影したバッグの写真を持っている)、
いつか自分の手元に届くといいなと願っていた。
チェンマイより北にある町のお祭りを散歩していたら、
まさかこんなところにいるはずがないようなその場所で、
チクチク刺繍する彼女の姿を見つけた時はほんとうにハッとした。
なにか良いものがあるときは、そこに視線がひっぱられるような感覚になる。
3時間近くチクチクする彼女の隣に座っていろんな話を聞いた。
「私はインド・西ベンガルでバンジャラ刺繍やペインティングを4年間勉強していたの。
だからこれは刺し子ではなくカンタなのよ。
私の場合、これは作品だから、集中した時にしか作れない。
前に縫い子さんを雇ったけれど全然ダメ、だから全部自分で縫っているの。
バンジャラのカンタが本当に好きなのよ。」
ああ、だからこんなにも惹かれるのかと納得。
バンジャラやインドの布によく出てくる寺院をモチーフにした三角形と
彼女の自由自在に動く手先から、瞬間瞬間に生まれていく宇宙のような刺繍。
刺繍だけではなく、バッグのすべてが手縫い、バンジャラの古い作品と同じように、
持ち手や縫い目を強くするために隅々まで何度も何度も重ねられたステッチには、
気の遠くなるような時間が詰め込まれています。
生地にもこだわりがあるそうで、主に日本のビンテージリネンを使っているのだとか。
バッグを裏返してもそこに広がるのは美しいステッチ。
何重にも重ねられたステッチのせいで表面が波打って、まるで立体的な作品のように仕上がっています。
5年の時を経て、初めてわたしのもとへやってきたバッグたち。
次はいつになるかわからない美しいカンタ、大切にしてくださる方のもとへお届けできますように。
私の強い想い、彼女の創造性と長い時間を感じてください。
近日中にオンラインストアに登場します。